ゆるキャラグランプリの「スベってる感?」について、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの

スベってる感?

 盛り上がっているところに水をサスつもりはないですが、「ゆるキャラGP」ってなんかスベってませんか?

 

 ぼくは住んでいる場所に強い思い入れを持つタイプの人間ではないです。今では特に珍しくもないでしょう。どこに住んでもだいたい同水準の生活が送れるように設備が整ってますし、ほしいものはアマゾンでだいたい手に入れられますし、友達はだいたいウェブに移行出来てますし(というかもともとそんなにいない)。でも最低限どこかには住まないといけない以上、選んだ自治体がまちを「良く」しようという試み自体に文句はありません。

 しかしクリエイティブ、つまり「クオリティ」を扱うジャンルとしてこの一連のゆるキャラブームの数々を見た時にはやはりモヤモヤする部分があるなと思ってしまいます。もちろん数あるプロジェクトの中ですから成功しているものもあるんでしょうが、僕だけではなく見守っているある程度多くの人が応援する気持ちと同時に冷ややかな目線も持っているように感じてしまうんですよね。

 今回はその冷ややかな目線を向けてしまうつまり「スベってる感」の原因を、ミクロ(=プレーヤーである周縁)の問題、とマクロ(=構造・ルールである中央)の問題の両面から、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなものをまとめてみたいと思います。

 

 

ゆるキャラにまつわる話(ミクロの問題)

 まず身の上話ですが、この辺りが僕のこの問題意識の原点なので話させてください。

 ぼくは今年の夏に友人の伝で、いま住んでいる地域の祭りの出し物の一貫として開催されたお化け屋敷の脚本を書かせてもらいました。内容はなんてことのないストーリーだったんですがその際めんどうな注文が入りました。

「ゆるキャラ」です。

 「ストーリーの中にその地域のゆるキャラを取り入れてほしい」との依頼が入ったんです。ストーリー自体ははじめからあまりかっちりと固めずにどうにでも転がせる状態だったため、脚本の変更自体はそれほど大変なものではなかったのですが、厄介だったのはこのゆるキャラが完全に「機能不全」だったんです。

 

 どういう状態かというと、そのゆるキャラにまつわる情報として渡されたのが「〇〇が好き」「〇〇を応援している」程度の性質・趣味・嗜好の覚書にも満たないようなもので、重要なのはそれが空間的(三次元的というか、、、)な情報にとどまっているんですよね。

 

 余談ですが、今流行るエンタメが、昔のそれとは違う部分って「時間」の関わり方だと思うんですよ。たとえばももクロとかいまは迷走気味ですが、「脚本家」が影にいて、(というとなにか陰謀的に感じてしまいますが、)大筋としての目標=紅白を目指して、というストーリー(=時間)的な高揚感を共同体験する。それを大前提にメンバーの魅力、スタッフの魅力、その他諸々が重なりあってあの一大コンテンツが出来上がっているんですよね。他にも脱出ゲームなんてまさにですよね。何もない場所にただストーリーを持ち込むっていう。例えがベタで申し訳ないですが、それを言い換えて「物語性」とか「ストーリー」といって、それが仕組みの根幹にあることがエンタメコンテンツの大前提になってますね。

(余談ついでですが僕が推したいのは「物語性」、「ストーリー」が「時間」の下位概念であって「時間」カテゴリはもう少し取り入れ白の発掘し白があるんじゃないかという部分です)

 

 長々脱線して申し訳ないですが、何がともあれ、ぼくが関わっていたその「ゆるキャラ」は、予定も場当たり的で、立ち位置的にも(市のメインキャラなのか委託された法人のキャラなのか)曖昧でとにかくゆるキャラにまつわる環境がしっかり整ってないんです。

 

 それで、後々になってからなんですが、「規模の問題」、とか「予算の問題」とかとは別にある疑問が浮かんできました。それは「この人達ってほんとうにゆるキャラが作りたかったのかな?」というものです。

 もちろん「やる気あんの?」という精神論のようなものではありません。少し考えてみたのですが、たとえば全国的に「ゆるキャラ」が町おこし、つまり、「まちを良くする活動」の象徴として大流行している中、隣のまちもその隣の町も「ゆるキャラ」をつくる。そんな中でゆるキャラを"まだ"作っていない市町村があったとしたら、

「ゆるキャラを作っていないこと」が「町おこしに積極的でないこと」

に繋がるのはそんなに想像を絶することではないのではないでしょうか。

 もしもそういった意識が本当に存在するのであれば(むしろそういった願望が生まれないほうが不自然だとすら思うが)規模が小さく、予算も相対的に少ない周縁にいけばいくほどクリエイティビティが必要になり、"藁にもすがる思い"でしょう。

 

 

構造の話(マクロの話)

ゆるキャラ®で町おこしをお考えのみなさまへ

我が国に限った事ではありませんが、いわゆるヒト・モノ・カネが都市部へ集中する地域格差による歪みは、
想像以上に大きく、私たちの生活に暗い陰を落としています。

しかしながら、近年、地域の特性を十分に生かしたPRや、
地方ゆえの素朴さをアピールしたプロモーションなど地方活性のアイディアは機知に富み、多岐にわたっております。
中でも「ご当地のゆるいマスコットキャラクター」通称ゆるキャラは地域活性の救世主として活躍しております。

ゆるキャラグランプリ実行委員会は当グランプリを通して、
ゆるキャラグランプリはプレゼンテーションである」というコンセプトを掲げております。

実際、多くのみなさまに、「ゆるキャラグランプリ」にエントリーする事による効果を実感していただいております。

1.デザイン決定までのプロセス
2.平面のデザインから立体のデザインへ
3.着ぐるみ製作の注意点とポージングのノウハウ
4.着ぐるみ運用のガイドライン
5.ライセンス契約のアドバイス
6.PR活動

上記1~6についてお考えの方は以下よりお問い合わせください。

(※筆者注 この後に連絡先リンクがありましたが、省略しました)

 

 引用したのはゆるキャラグランプリのオフィシャルウェブサイトに掲載されている「ゆるキャラで町おこしをお考えのみなさまへ」(http://www2.yurugp.jp/partnership/)と題されたのページの一部分です。

 ここからはマクロ(=構造・ルールである中央の問題)の話に入っていきます。ここであえて、僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの(もうやめます)に触れてしまおうと思います。

 ぼくたちが「ゆるキャラ」に対して、やや冷ややかな目線を向けてしまうのは、このゆるキャラという一連のブームを産出している、構造・ルールそのものに「古さ」を感じてしまっているからである。あくまでも"結論"ですので断定口調で書いてみました。「古さ」とは「既視感」です。

 そして僕が表現したい古さと言うのは「古い」=「ださい」という感情的なものではありません。それは

 

「マニュアル通りにやれば"必ず"とは言はないまでも、かなりの高確率で成功する。なぜならそのマニュアルは成功から作られたマニュアルだからである。」

 

とも取れるシステムの「古さ」です。どこかで聞いたことのある論理ですね…

 

 つまり、ゆるキャラを見て微笑ましいと思いつつも心のどこかで「スベってるな」と思ってしまう、それはこのゆるキャラブームの端々(たとえば先程の引用からもわかる通り、構造・ルールが「公開可能」の情報として存在していることなど)から、そのような「古いやりかた」に既視感を覚えてしまい、なおかつ重要なのは、

 

構造・ルール(あるいはシステム)が「公開可能」の情報として存在していることに対して無意識であること

 

であると言えるでしょう。なぜならプレーヤーである地方自治体が"藁にもすがる思い"だからです。

 

 実際に先程の引用に見られる、マニュアルは規模的にも人員的にも経済的にも相対的に乏しい周縁のプレーヤーからして見れば"ありがたいもの"になるのでしょう。しかし「高度なエンタメ体験を重ねている現代のぼくたち」とあえて意地の悪い視点からみてみると、藁にもすがって手に入れたその要素が相対的に他のエンタメよりも「劣って」つまり「スベって」見える原因となる要素になっているのだと思います。

 

 

まとめ

 最後にかんたんにむりやり"一文で"まとめに入りますが、「ゆるキャラ現象」になんとなく「スベってる感」を感じてしまうのは、ゆるキャラが新しい現象として取り上げられつつあるが、大本は「マニュアル通りにやれば成功する」という「古いやりかた」に運営されており、なおかつそれが公開可能である状態に運営側が無抵抗、無意識であって、一連のプロジェクトの端々からその意識を感じ取れてしまうからである。

 しかし(ああ二文目…)その背景にはブームに煽られた結果、十分な環境が整わない中で必ずしも積極的ではないかたちで参入させられている"周縁"の存在の可能性が多分にある。()そしてそういった人たちにとっては、一つのエンタメとしてはつまらなくなるこの要素がやっとのことですがりつく藁にさえなりうる、という悪循環が働いている、のではないでしょうかということです。

 

 

 この他にも、町おこしの地域性・地元性や、エンタメの大きな流れなど、この話に関してはまだまだ考えるべきことが多いと思いますがきょうはこのくらいでとりあえず手が痛いです…。それにしても20年後に役所の倉庫の片隅に追いやられた物悲しそうなキグルミたちの姿が思いやられてしかたがないのですが…。